#3 オナ禁の果てに見えた現実|羽ばたけ!おなるの開業日記

こんばんわ。

おなるくんです。

地獄の一ヶ月を抜けた私は、完全に解放されていました。

包丁じゃなく、やっとチンポを握れる日々。

(はい復活!オナニー連投モード突入!)

FANZAの新作を時間無制限で漁る背徳感――最高。

映画を見てみたり、アニメをチェックしたり。働かないって最高だなー。

でも同時に、頭の片隅には「もうやるしかない!」という決意が残っている。

だって、仕事ないからお金なくなっちゃう。あーー怖っ。

 

怖いけど逆にチャンスでもある。

どうせ追い込まれるなら、自分の店で勝負したい。

「オレが本当にやりたかったこと、もう逃げられない」って未来がチラついて、

ちょっとワクワクしてる自分もいた。

だから昼間は創業計画書を練り直したり、借入のために国民政策金融公庫・銀行

商工会に行ったり、厨房機器の見積もりを出したり、レシピのまとめや業者の打ち合わせ。

物件が出たときには、すぐ動ける状態にしなくちゃ。あー――楽しい。

心が完全に“自分のため”に戻ってきていた。

 

そんなルンルン気分のときは、やっぱり地元のマイメンに会いたくなるものです。

いつものように友人の焼鳥屋に顔を出すと、デザインをお願いしている仲間も合流して、

ちょっとした打ち合わせになりました。

近況を報告しつつ、先月の居酒屋での地獄の日々を話すと、友人が真顔でこう言いました。

「おなる、なんで居酒屋なんか手伝ってんの? 自分のことやれよ!」

その言葉は胸にズシンと刺さりました。説教というより、優しい喝。

(しょうがないじゃん!断れなかったんだし、いいこともあったんだから!)

そんな言い訳を飲み込み、「はい。精進致します」とだけ答えました。

酒を飲み、笑い合いながらも、彼らの目は真剣そのもの。

その眼差しに背中を押され、やりますか。

 

(よし!物件を決めにかかろう。)

 

そして、炎天下の中をチャリで漕ぎまくる日々が始まったのです。

太陽は容赦なく照りつけ、腕や首はあっという間に真っ赤に日焼けしていく。

汗が目に入り、頭もクラクラしそうになる。

けれど不思議と、チャリを漕ぐ足は止まらなかった。

高揚感というか、やる気に背中を押されているようで、むしろ気持ちが軽かった。

気づけば人通りをぐるっと回って、4時間は走っていたが、全然平気だった。

オレって単純。

 

最寄りの大きな駅の周辺を回り、空きテナントを探す。

人の流れを観察し、家賃を抑えられる少し外れた立地もイメージする。

細い路地までくまなく見て回る。

正直、物件探しは簡単じゃない。以前にも経験はあるが、今回も思うようには見つからない。

それでも、25年ぶりに戻ってきた地元。

高校時代に過ごしたエリアを歩いていると、土地勘が少しずつよみがえってくる。

懐かしさと新しい挑戦が入り混じった、不思議な感覚を抱きながら...

「よし、次のエリアもいってみよう!」

そうつぶやき、ペダルを踏み込んだ。

1日目ーーエリアを少し絞れた。この辺りならやれるかも。

ただ、成果は0。でもなんか気持ちいい。

 

2日目ーー「とにかくアクションを起こさなきゃ」

ただ闇雲に歩き回るんじゃ意味がない。

そこで、まずは「ここならやれるかも」と思えたエリアを一つ決め、

その周辺の不動産屋に入ることにした。

この動き方が一番手っ取り早い。

それに、不動産屋に直接話を聞けば、坪単価や客層、人通りといった生の情報も取れる。

だから、とにかく手当たり次第に扉を開けて回った。

結果、この日は不動産屋を3件回ったが、どれも私のイメージする物件は見つからなかった。

「まあ、そう簡単に見つかるわけないか」と思いつつ、

だよね、そんなに甘くないよな、と自分に言い聞かせる。

正直、手応えはまだ薄い。

前向きな気持ちはあるけれど、

焦りがまったく無いかといえば嘘になる。

そんな気持ちを抱えたまま、帰り道をチャリで走った。

真っ青な空に入道雲が浮かび、セミが鳴きわめく。

最高の夏の景色のはずなのに、胸の奥の不安と重なってどこか鬱陶しく感じた。

「本当に良い物件、見つかるのかな…」

真っ青な空なのに、心は晴れなかった。

 

3日目ーー不安を抱えたまま、それでも足を止めるわけにはいかなかった。

「本当に良い物件なんて見つかるのかな」

そんな気持ちが頭をかすめる一方で、

「いや、きっとある。今日も探そう」と、

どこかで自分を奮い立たせ、足を前に押し出していた。

そうして狙っていたエリアを何度も見て回る。当たり前だが風景は変わらない。

それでも歩く。考えながら歩く。

――いや、考えているようで、実は何も考えていないのかもしれない。

不安なのに前向きで、焦っているのにどこか急いでいない。

足取りは軽いのに、胸の奥は鉛のように重たい。

うまくいく気もするし、絶対にダメな気もする。

心はぐちゃぐちゃのまま、それでも足だけは前に進んでいた。

ふと、気づけば参道に行き着いていた。

 

そこは高校時代、友達とよく溜まっていた場所だった。

大きな参道に、ぽつんぽつんと並ぶベンチ。

懐かしい空気が胸いっぱいに広がり、思わず立ち止まる。

まるで時間が一瞬だけ止まったような感覚。

25年ぶりに地元に戻ってきた意味を、じんわりと噛みしめていた。

(そういえば…ここで東谷さん(おなるくんを作ってくれた、愛すべき変態のドS野郎)が、

クリスマス、カップルに玉子投げてたなー。)

そんなエモさに浸っていたら、不意にあの記憶がフラッシュバックした。

 

――ある夜、東谷さんが「初めて3Pしたんだよ」と武勇伝を語っていたこと。

その話を聞いた私は、高校生ながら3Pという言葉にドキドキした。

あんなの変態のすることでしょ。当時ウブな私はそう思った。ただ、すごい興味があった。

「ラブホテルって3人でも入れるのかな?追加料金ってどうなるんだろ?」

「そもそも3人でやるって、どんな感覚なんだろ?」

当時、頭の中で止まらなかったそんな妄想を、今も鮮やかに思い出す。

そして気づけば、その思い出に引き寄せられるように...

話にあったラブホテルへ足が向いていた。

 

到着するとそこは、昔とあんまり変わらず、

ちょっと寂れたラブホテルが3軒くらいと、閑静な住宅街。

また近所には大きな公園があり、緑もいっぱい。

さっきまでまとわりついていたグチャグチャした気持ちが、

スーッと溶けるように消えていった。

不安も焦りも、ふっと遠のいていく。ただポーッとする感覚。

理屈じゃなくて、「あー、なんかここ好きだな」と思った。

――自分でも驚くほど、自然に口をついて出た。

「ここだ。オレのやりたいところ。」

 

3Pのことも、矛盾した気持ちも、そのときはもう頭になかった。

ただこの街に、漂っていたかった。

それだけの感覚だった。

風に揺れる木々や、少し寂れた街並みを眺めながら、ただ歩くのが気持ちよかった。

人通りは多くない。むしろ静かで、時間の流れがゆったりしていた。

商売を考えれば不安になるはずなのに、その静けさがなぜか心地よい。

建物もどこか古びていて、綺麗すぎない。

そのちょっとくたびれ具合が、街の空気と妙に合っていて、落ち着いた。

なんか理由なんてどうでもよくて、「あー、この空気感いいな」って、ただそれだけ。

 

そんな気分のまま、駅前の小さな昔ながらの喫茶店に入った。

冷たいアイスコーヒーとガンガンの冷房に当たりながら、

甲子園を眺めて、頭と体をゆっくり冷やした。

ここでフライドチキンのお店ができるか、ふと想像した。

うん。やっぱりできそう。この街で働きたい。

何より、ラブホすぐそばじゃん。だから落ち着くのか。

ってか、また東谷さんじゃん。

 

――そうだ。離婚で落ち込んでいたとき、

「おなるくんやればいいじゃん」と笑って言ってくれたのも東谷さんだった。

ラブホだってそう。「ラブホでバイトどうかな?」

「絶対そこにしろ!」と即答したのも、東谷さん。

あの何気ない一言が、結局いま私をここに立たせている。

高校時代のくだらない思い出から、大人になってからの選択まで。

すべての線が、この大宮公園で一本に繋がった気がした。

その瞬間、ラブホで一緒に働いた熟女社員、支配人、清掃スタッフたちの笑顔までふっと浮かんだ。

あの人たちの存在もまた、私をここまで連れてきた線のひとつだった。

 

そう思ったら、もう止まれなかった。

 

喫茶店のおばちゃんに空きテナントを聞き込み、教えられた場所をすぐチェック。

1件目を見た瞬間、胸の奥がドクンと高鳴った。

ドンずば。決まった。ここだ。

その足で、すぐ近くの地元系不動産屋に向かった。

「すみません、あそこの物件って…」

もう立ち止まってなんていられなかった。

とにかく早く結果を知りたくて、勢いのまま声をかけていた。

「管理物件じゃないけど、確認してみましょうか」

その瞬間、胸の奥で確信に変わった。

(きたーーーーー!!)

完全に舞い上がっていた。

期待と興奮で、もう頭の中は、店の光景でパンパンだった。

看板、厨房、メニュー、客席、チキンの香り――

頭の中に散らばっていたイメージが、次々カチッとはまっていく。

「これトントン拍子で行くやつだ!」

そう信じて疑わなかった。

 

けれど――。

この高揚感が崩れ去るなんて、

そのときはまだ想像もしなかった。

 

ではまたいつかの夜に。

 

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